* UTF-8 encoded text file. このテキストはUTF-8でエンコードされています。 また、JIS第3-4水準漢字を用いていますので、それらを含んだフォントでご覧 下さい。拙作のフォントでも結構です。一度ダウンロードなさってから、エ ディタなどでご覧頂く方が良いと思います。 ■■■ 新しい人名漢字の対応について ■■■ .1 ■ 新しい人名漢字 まだ確定なのかどうかは分かりませんが、新しく人名に用いることのできる漢 字が発表されています。 法務省(http://www.moj.go.jp/)/パグリックコメント/「16.6.11 人名用漢字 の範囲の見直し(拡大)に関する意見募集」のページで原案のPDFファイルがダ ウンロードできます。この案から既に削除する漢字が示されていますが、まあ このPDFに記載されている内容よりも増えることはないだろうと言うことで、 このPDFをベースに話を進めたいと思います。 .2 ■ 新しい人名漢字はJIS基準か PDFファイルを見ると、書かれている漢字が大きく2つに分けられていることに 気付くでしょう。1つは「第1水準」で、もう1つは「第2水準以下」です。この ことから、2つのことが読み取れます。 1つには、わざわざJISの用語である「第?水準」という言葉が用いられている という点。人名用漢字は、JISの示した通りの漢字を使わなければならないと 言うことなのかと、感じさせられます。 もう1つには、第2水準に「以下」が付いている点。これにより、新しい人名を 使うためには、「JIS第3-4水準漢字」が必要であると言うことになります。市 販されている多くのフォントは、漢字に関して言えば「JIS第1-2水準」と 「NEC/IBM漢字」対応のものがほとんどです。と言うことは、特別にこれらに 対応したフォントを入手しない限り、氏名データを作成できなくなる場合があ ると言うことです。 表中、JIS第3-4水準漢字の使われている部分を書き抜きしておきます。 頰囊噓吞剝摑繫塡蟬禱萊蠟鷗俱蔣顚焰簞醬繡 .3 ■ 字形について PDFファイル上で字を選択してみると、字が書かれているものと、字が画像と して貼り付けられているものがあるのが分かると思います。この画像として書 かれている漢字はいったい何なのでしょうか。 「標準的なフォントでは表現できない部分」であることは間違いありません。 と言うことで、前述の第3-4水準漢字部分は、この様に画像張り込みにより表 現されています。 では、それ以外は何なのでしょうか。答えは、1文字を除いて、「JIS X 0213:2004で例示字形の変更された漢字」です。包摂の範囲内ですから画像張 り込みまでしなくても良さそうなものですが、ほぼ完璧に張り込まれていま す。つまり、新しいJIS規格に則った漢字を忠実に守っている訳で、この面か らも標準的に流布しているフォントでは表現しきれないことが分かります。 付け足せば、表中のJIS第3-4水準漢字は、本来難しいあまり使われない文字を 採用したという訳ではなく、旧JISの字形を取り入れるためにやむなく採用せ ざるを得なかった漢字なのです。ですから、この部分も旧JISのためであると 言えるでしょう。 ※ たとえば、「鴎」の例示字形を「鷗」に戻したいとします。しかし、 「鷗」と言う字はUnicode上には、既に存在しているのです。ここで 「鴎」の字形を「鷗」に変更したりすると、Unicode上には「鷗」が2つ存 在することになってしまいます。この様な場合、「鷗」の字を使えるよう にするには、既に存在する「鷗」を第3水準の字だと言うことにしてJISに 取り込むしか無いのです。前述の20文字は、この様な文字であると言って 良いでしょう。 では、除かれた1文字とは、何なのでしょうか。 .4 ■ 旧JIS字形 JIS X 0213:2004で例示字形の変更された漢字は、多くは旧JIS(78JIS)から新 JIS(83JIS)への過程で、旧字/正字から新字/略字に変更された例示字形を、元 に戻すものです。前項で述べた「画像張り込みにより表現されている漢字」 は、ほとんどこれです。 その中で1文字だけ、妙な漢字があります。「梛」です。この漢字は旧JISでは 真ん中の部分の「刀=」で、「=」が「刀」よりも右に突き抜ける形でした。そ れが新JISになって、現在の突き抜けない形に変更されました。これは「那」 も同様の変更を受けています。 ■■■■□   ■■■■□ □■□■□ → □■□■□ ■■■■■   ■■■■□ □■□■□ → □■□■□ ■■■■■   ■■■■□ □■□■□ → □■□■□ ■□□■□   ■□□■□ ■□■■□   ■□■■□ しかし、この「梛」は、JIS X 0213:2004で例示字形の変更を受けていませ ん。つまり、新JISの例示字形がそのまま生きているのです。にもかかわら ず、今回の人名用漢字のPDFでは、わざわざ画像を張り込むことにより旧JISの 字形で表示しているのです。これはいったい何を意味しているのでしょうか。 この1文字だけは、意図が全く分かりませんでした……。(-_-; .5 ■ おわりに 今後発表する/されるフォント(これは拙作のフォントに限りません)は、どう もJIS X 0213:2004の例示字形に従う必要がありそうなこと、少ない文字数で はあっても第3水準漢字も入れなければならないこと、となりそうです。 現在出回っているフォントのほとんどが、何らかの対策を取らなければならな くなりそうです。「第1水準」+「第2水準にある人名漢字40文字」と言う内容 のフォントの場合、対応させるのは結構手間かも知れません。また、追加しな ければならない第3水準漢字の内、「噓吞剝蟬俱焰簞」の7文字は、MSゴシック やMS明朝が持っていない範囲の文字であるため、TTEditなどでの作成は比較的 面倒でしょう。 とは言うものの、JIS X 0213:2004の例示字形の変更については、未だに疑問 があります。全国に数多くいらっしゃると思われる「辻」さん、「辻村」さ ん、「辻田」さん、「辻本」さん、これらの方の名前が無条件に1点シンニュ ウから2点に換わってしまうのです。1点か2点かに拘る方は多いと思います。 拙作のフォントでも、「標準の辻」は「1点シンニュウ」だからということ で、「特に2点が欲しい」人のために「外字」で「2点シンニュウの辻」を用意 しています。これまでに発売/配布されてきたフォントはほとんどが新JIS準拠 でした。今後は混ざってくるものと思われます。これらの例示字形の変更され た漢字を名前に持つ方にとって、受難の時代が始まるものと思われます。 さあ、拙作のフォント群の対応は、どうしたものでしょう。(^o^;